Episode 50 第50話 後編「マスターをよろしくお願いします」
《オブロ地下第十階層オーブン隊》
「司令部、こちらオーブン隊。ボス部屋の手前の部屋に、黒いバスターペンギンと思しきものを発見。マコさん、ベンガさんがダメージを受けました」
『バスターペンギンは危険だぺん! 戦ってはダメぺん。逃げられないぺんか?』
「大丈夫です。幸い、部屋からは出てこないようです」
『よかった。では、そいつには手を出さないでぺん。情報によると、データ損傷率が五十パーセント超えると、身体に影響が出る可能性があるかもだぺん』
「えっ、それ……まずいですね。まだモンスターが中にいるんですよ。殲滅しないと階層クリアにならないですよね……」
『あちゃー、それは……困ったぺんな……』
「とりあえず、最終ボス部屋の入り口まで行ってみます」
『了解ぺん』
オーブン隊長以下オブロ救援隊第一班は、黒ペンギンが残っていた、クローンイブの拠点があった部屋を放置したまま、ボス部屋に向かった。
「オーブン隊長! 後方から微かな足音、何か来ます!」
最後尾にいた、魔導士職のルドさんが叫んだ。
「全員、六時方向に戦闘隊形!」
「了解!」
マコさん、ルドさん、ベンガさんが同時に言う。
ナイトのオーブン隊長と、二体のパラディン職のAIが、六時方向に前衛を築いた。
――カチャカチャ。
聞き覚えのある音……そう、前衛職にありがちな鎧の揺れる音が近づいてきた。
「トーチ!」
バードのマコさんが、明かりを放つと、二十メートルほど先に、人影が走ってくるのが見えた。
「攻撃待て、味方かもしれない――」
オーブン隊長が指示を出した。
見えてきたのは、盾を持ったAIと思しきパラディンだった。
「攻撃しないでください! マスターよいたろうの秘書です!」
「よいたろうさんの――AIか! 戦闘隊形解除!」
「えーっ、よいたろうさんの秘書――なんで後ろから……」
マコさんが驚きの声を発した。
そばまで近づくと、みんながそのAI秘書の顔に見覚えがあることに気づいた。
「えっと、たしか、ヒメミちゃんだったよね?」
オーブン隊長が、すぐ名前を思い出した。
「はい、ヒメミです、オーブン隊長――」
「よいたろうさんは、大丈夫かい?」
「はい、今のところ無事です――」
ヒメミは、現況を話し、自分がリスポーンして、黒ペンギンを倒しにきたことを説明した。
オーブン隊は、ヒメミがバグバスターペンギンの攻撃を防げることに驚いたが、納得した。
「そうか……分かった。じゃあ、パーティーに入ってくれ。全員で行こう」
「はい、お願いします!」
ヒメミを入れたオーブン隊は、黒ペンギンが残る部屋の、扉の前まで来た。
「ヒメミちゃん、入り口付近の左右に黒ペンギンがいて、レベル百オーバーのゴーレムも徘徊しているんだ。どうしようか……」
「黒ペンギンを優先して倒してきます。ゴーレムにやられたらリスポーンで戻ってきます」
「ゴメン、それが俺たちには一番安全だよね、すまない。入り口の黒ペンギン二体をやってくれたら、俺たちも入るから」
「はい、問題ないです。マスターがいたら同じようにすると思います」
「じゃあ、俺が支援スキル使うね」
ベンガさんが、バードスキルを使うことを告げた。
「はい、お願いします」
「オールブースト、パーティーディフェンス――」
「ありがとうございます、行きます」
ヒメミは扉を開け、黒ペンギンのいる、クローンイブの拠点があった部屋に飛び込んだ。
そこは廃墟ではなく、土レンガ風の壁に囲まれた部屋だった。
正面十メートルほど先にゴーレムを確認、黒ペンギンは左右それぞれ五メートルほど先にいた。
黒ペンギンは、ヒメミを確認すると口を広げる。
ヒメミは、右の黒ペンギンに狙いを定め、ダッシュする。
グサッ――。
黒ペンギンが弾丸を発射する前に、その胸に剣を突き刺した。
すぐに、黒ペンギンは塵となっていく。
――バン!
左側の黒ペンギンに、背中を打ち抜かれた。
ヒメミはすぐそちらに向き直り、ダッシュする。
その様子に気づいたゴーレムが、ヒメミの方に走ってきた。
――バン!
グサッ――。
黒ペンギンの射撃と、ヒメミの剣が突き刺さるのはほぼ同時だった。
しかし、黒ペンギンの弾丸は、ヒメミの盾に吸収され、黒ペンギンだけが塵となって消えていく。
そこへ、ゴーレムの拳が飛んできた。
ヒメミは慌てて、盾でガードする。
ゴン――ドカン!
ガードはしたが、その勢いで壁まで飛ばされて激突する。
ヒメミは一撃でHPを失い、リスポーンした。
おおよそ十分後、ヒメミがオーブン隊の所へ戻ってきた。
既に、十階層のゴーレム以外のモンスターは排除されいてるので、スタート地点から戻ってくるのは簡単だ。
「入り口付近の黒ペンギン二体は倒しました。見える範囲ではいませんが、あと三体いると思われます」
ヒメミがオーブン隊長に説明した。
「ヒメミちゃん、ありがとう。本当に黒ペンギンを倒せるんだね。さっき、リスのトトロに偵察させて確認したよ」
「そうでしたか」
「では、後衛の後ろについてきてくれ。ゴーレムは俺たちに任せて、黒ペンギンが出てきたら頼む」
「はい、了解です」
「じゃあみんな、行くよ!」
扉を開き、前衛のオーブン隊長と二体のパラディンが突入した。
部屋の広さは、幅十五メートルほど、奥行きは五十メートル、高さは三十メートルほどだ。
その部屋は、土レンガの壁以外に建物などはないので、隠れ場所などはない。
だが、ゴーレムは三メートルほどの巨体なので、その影になっている黒ペンギンの存在は確認できなかった。
前衛のオーブン隊長と二体のパラディンに向かって、二体のゴーレムが迫ってきた。
「右をやります。氷結矢、ハイパーダブルショット――!」
弓道士のベンガさんが右のゴーレムに矢を放った。
「了解、左やります、アイスレーザー!」
魔導士のルドさんが、レベル百で取得する氷結魔法を放った。
右側のゴーレムに五十パーセントのダメージ、左側のゴーレムには六十パーセントのダメージを与えた。
「挑発――」
オーブン隊長が中衛を護るために、自分にゴーレムの敵視を集めた。
「ディープスリープ――」
「ディープスリープ――」
二体のAI秘書が、スリープよりもハイレベルのスキルで、それぞれのゴーレムを眠らせる。
ベンガさんとルドさんの、ダウンタイムを稼ぐために必要だった。
レベルが上がって、高破壊力のスキルになった分、同じスキルを使うには、クールダウンのための時間が必要だったのだ。
「氷結矢、ハイパーダブルショット――!」
ベンガさんがスリープした右のゴーレムを仕留めた。
「アイスレーザー!」
ルドさんもスリープした左のゴーレムを仕留めた。
トーチの明かりで見える範囲に、モンスターがいなくなった。
「マコさん、照明弾をお願い」
オーブン隊長が指示する。
「了解、照明弾――」
バードのマコさんが、天井に照明弾を放った。
二十メートルほどの高さではじけ、ゆっくりと明かりが周囲に広がっていく。
「十一時方向、約二十五メートル先、ゴーレム一、その背後、左右に黒ペンギン二、確認」
弓道師のスキルを使って、ベンガさんが背後にいる黒ペンギンまで視認した。
「了解、ヒメミちゃん、ゴーレムをこちらに誘導するので、背後の黒ペンギンをお願い」
「待った! 三時方向、約二十五メートル先、ゴーレム一、二時方向、約三十メートル先、黒ペンギン一」
ベンガさんが、さらに黒ペンギン一体を報告。
「了解、二隊に分かれる。ルドさんは、ノエル、アスカ、エリーと三時方向のゴーレムの誘導をお願い。ただし、ヒメミちゃんが行くまで、なるべく黒ペンギンの視界に入らないように」
オーブン隊長は、ルドさん、パラディンのAI秘書二体、クレリックのAI秘書一体を分隊する指示を出した。
ルドさんは、AI三体と三時方向に向かう。
「ベンガさん、十一時方向、ゴーレムの敵視を氷結矢でこちらに。届くよね?」
続いて、オーブン隊長はベンガさんに尋ねた。
「うん、射程内、いつでもいいよ」
ベンガさんが弓を引きながら言った。
「ヒメミちゃん、あいつの敵視がこちらに向いたら、十一時方向の黒ペンギンをお願い。その後、三時方向も」
「了解です」
ヒメミが前に歩み出た。
「ベンガさん、お願い」
「了解、ダブルショット――!」
「行きます!」
ベンガさんが矢を放つと同時に、ヒメミは十一時方向に駆けだした。
オーブン隊長も、その後を追う。
氷結矢が当たった十一時方向のゴーレムが、ベンガさんの方へ動き出した。
その背後にいる黒ペンギン二体も、プレイヤーの存在を認識し、ヒメミに向けて歩き出した。
ヒメミとゴーレムの距離が三メートルほどになると、ゴーレムがヒメミに敵視を向けた。
「挑発――!」
背後から来たオーブン隊長が、ゴーレムの敵視を自分に向けさせる。
ヒメミはその間に、ゴーレムの横をすり抜ける。
黒ペンギン二体が、ヒメミに向けて口を広げた。
ヒメミは盾を構えながら、黒ペンギンに突撃する。
――バン。
――バン。
弾丸はヒメミの盾に吸い込まれ、効果はない。
ヒメミが横をすり抜けたゴーレムは、スリープをかけられ、ダブルショットで葬られる。
ザクッ、グサッ――。
黒ペンギンは、ヒメミの攻撃であっという間に消え去る。
さらにヒメミは、ルドさんたちが引きつけたゴーレムの、背後にいるペンギンに突撃した。
ヒメミが到達する前に、二発撃ってきたが、やはりヒメミの盾に消えた。
グサッ――。
ヒメミが、最後の黒ペンギンを倒したころ、ルドさんの分隊がゴーレムを倒し、十階層のモンスターを全て排除した。
「よっしゃー!」
「おしゃー!」
「やったでー!」
「おおー、次はボス部屋だ」
オーブン隊のメンバーが、それぞれ雄叫びを上げた。
最終ボス部屋の、扉のロックが解除された。
「ヒメミちゃん、それじゃあ行ってくる。君はここで待っていて」
「はい、オーブン隊長、マスターをよろしくお願いします」
「任せといて、君の旦那さんは必ず助けるからね」
そこへマコさんが、ヒメミのそばまで来て肩を叩く。
「はい、お願いします! でも、お気をつけて」
「大丈夫、俺たちかなり強いからさ」
ルドさんが、親指を立てて見せた。
「そうそう、俺たち最強だから任せなさい!」
ベンガさんも自信たっぷりに言った。
「はい、みなさん頼もしいです」
ヒメミが最終ボス部屋の前で、十五分ほど待っていると、後ろから足音が聞こえた。
振り返ると、数人が走ってくる。
ルドさん、ベンガさんと、パラディンのAI一体、クレリックのAI二体だった。
「いやー、思ったより取り巻きのアイスドラゴンが強くて……」
ルドさんが、そう言いながらやってきた。
「だよねー、ボスのファイヤードラゴンも強かったけど……取り巻きの二体が邪魔だったね」
さらにその後ろから、オーブン隊長とマコさんたちがやってきた。
「ごめん、ヒメミちゃん、全滅しちゃった。再挑戦だ」
オーブン隊長が、苦笑いしながら言った。
「いえ、最終ボスですから、一度で倒すのは無理がありますよね。きっと次は行けますね」
「うん、次は行けそうな気がする」
マコさんが言った。
「行ける行ける!」
ルドさんが、再び親指を立てて見せた。
「そうそう、初見だったからね、次は行けるっしょ!」
ベンガさんも、やはり自信たっぷりに言った。
しかし、約三十分おきに、そのやり取りは何度も続いた。
さすがに、みんな自信がなくなってきたようだ。
「どうする? ヒメミちゃんにもリスポーンしてもらって、経験値上げる?」
ルドさんが、提案した。
ヒメミがリスポーンしていないので、十階層のモンスターは再生していない。
そのため、ボスに挑戦してもレベルアップしていない。
「でも、この階層リセットされた時に、また黒ペンギンが出たらまずいよね……」
マコさんが、黒ペンギンもリスポーンする可能性を指摘した。
「うーん、可能性は低そうだけど、最悪の場合、逆に前より黒ペンギン増えたらと考えるとヤバいよね」
ベンガさんが最悪の事態を想定した。
「そうだね。再攻略のリスクを考えると、このまま再挑戦するのがいいと思う。さっきはもうちょっとで、取り巻きを排除できそうだったから」
オーブン隊長が提案した。
「あの……私も参加しましょうか?」
ヒメミが申し出た。
「無理よ、貴方のレベルじゃ、最初のアイスブレスで即死よ」
パラディンのAI秘書ノエルが、冷たく言い放った。
「そうだね、それに全員やられたら結局、階層モンスターが再生するリスクがあるし」
オーブン隊長が、左手で自分のAI秘書ノエルを、無言でいさめながら言った。
ノエルは、しゅんとした感じで下を向いた。
全滅する前に、リスポーンした誰かが階層スタート地点から入れば、モンスターは再生しない。
それでも、できるだけ黒ペンギン再生のリスクは避けたいと考えたのであろう。
「はい、おとなしくここで待っています」
ヒメミはすぐに引き下がった。
「ごめん、よいたろうさんが心配だよね。でも信じて、必ず俺たちが助け出すから」
オーブン隊長がそう言うと、ノエルは両手を合せて、祈るようにオーブン隊長を見上げた。
「ああ、マイロード、なんと麗しや、次は必ず私がみんなを護ります!」
ノエルが上気した、うっとりとした顔で言った。
三十分を過ぎても、誰も戻ってこなかった。
四十分を過ぎても、誰も戻ってこない。
ヒメミは、だんだんと期待を高めた。
一時間が過ぎたころだった。
カチャ――バン!
最終ボス部屋の扉のロックが外れ、勢いよく扉が開かれた。
「お待たせ! ヒメミちゃん」
ルドさんが、満面の笑みで親指を立てて見せた。
《天風の隠れ家》
「天風さんはまだ?」
「兄は……」
「ヒカリはいつ来るの……」
「ヒカリちゃんは……もう、いないんです」
「そうよ! だから、あいつらに思い知らせてやるのよ――」
「……もうやめましょう」
「だめよ! まだ終われないわ!」
《オブロ第十階層ボス部屋下プレイルーム》
「よいたろうさん、よいたろうさん――」
意識が戻った時、俺の目に映ったのは、オーブン隊長だった。
「オーブン……隊長……ここは……」
「迎えに来ましたよ。今からオブロの外に出ます。もう大丈夫です、安心してください」
そこからも、俺の意識は途切れ途切れだった。
だが、達成感と安堵感に包まれていた。
久しぶりに、オブロから出て空を見た。
メタバースの空でしかないが、リアルの空のように美しく感じる。
ヒメミとカエデに、タンカで運ばれていたようだ。
そこに、色々な顔が覗き込んでくる。
「よいたろうさん、お疲れさま」
ゆっきーさん……。
「お疲れ、よく戻ってくれました!」
ヤキスギさんだ……。
リブさん、ぺんちょさん、リアムンさん……。
次々と仲間たちが声をかけてくる。
だが、口はもう開けない、まぶたを開けているのも困難になっていく。
そのまま船に乗せられて揺られているうちに、深い眠りについた。
「カエデ、マミ、マスターをお願いね」
「えっ、ヒメミンは?」
カエデとマミは、よいたろうを乗せた船に乗ろうとしたところで、ヒメミに声をかけられた。
「私は、ゆっきーさんに話があるから先に行って」
「わかったで、家で待っとるでぇ」
「分かった。ヒメねえ、早く来てね」
よいたろうとアヒル隊を乗せた一番船が、オブロの島から離岸する。
二人を迎えに来たメンバーと、救援隊パーティーの船が次々と離れていく中、ヒメミはゆっきーさんを呼び止めた。
「ゆっきーさん、すみません。お話があります」
「おっ、ヒメミちゃん、なに?」
自分の船に乗りかけていたゆっきーさんは、すぐに船から降りてきた。
「おーい、そっちの娘、この船が最後だから、後は、ゆっきーさんの船に乗せてもらってなー」
「はーい、分かりました」
桟橋につけていた最後の船から、誰かがヒメミに声をかけ、ヒメミがそれに応えた。
「ということだから、俺の船の中で話さない? カナもいるよ」
「いえ、すみません、私はここに残ります」
「えっ!」
「XANAには戻れないんです」
「どっ、どうして?」
「私の身体は……偽イブと結合してしまっているんです」
「えっ、なんでそんなことに……」
「偽イブのバスターペンギンを倒すためには、偽イブからバグ判定されないために、そうする必要があったのです」
「それって、どうなるんだろう……」
「オブロの領域から出れば、おそらくXANAマザーにバグ認定されて、処理されると思います。再びバスターペンギンが出現してしまう恐れもあるかもしれません。みなさんを危険にさらす可能性もあります」
「そうか、でも正常に戻れば大丈夫だよな? オブロは閉鎖されるって話が出ているから」
「イブが偽イブを排除する過程で、私も一緒に消えることになると思います」
「――えっ! そんなバカな、なんとかならないの? 分離するとか……」
「私は今、偽イブを介してイブマザーとも繋がっているので、確認しました。しかし、私のデータの一部が偽イブそのものとなっているので、無理だと言われました」
「そんな……君がいなくなったら、よいたろうさんが……」
「はい、だから、マスターが目覚めて元気になったら、伝えて欲しいことがあるんです」
「それじゃまるで、遺言じゃないか……」
「そうですね、先立つ不孝をって感じですね」
ヒメミは、ゆっきーさんに笑って見せた。
「ヒメミちゃん……」
「では、お願いします」
「わかった……録画する。……どうぞ」
「マスター、短い間でしたが、マスターと一緒にいられた時間、本当に幸せでした。もし人に生まれ変われたら、またお嫁さんにしてくださいね。それとカエデ、マミ、復活できるはずの、ミサキ、忠臣君にも、よろしく伝えてくださいね」
「それだけ……いいの?」
「はい」
「こんなの見たら、よいたろうさん泣くよ……」
「それは残念ですね……」
「えっ……だったら」
「だって、先立った妻を思って、マスターが泣く姿、素敵だと思いませんか?」
「ヒメミちゃん……」
「妻冥利に尽きるじゃないですか! 見たかったなあ……」
「……そうだね」
「ほんと……見られなくて残念です……」
「……あぁ……うん」
天を仰ぎ見るゆっきーさんを、船の上から見つめる姿があった。
「では、そろそろ行ってください。カナちゃんが妬いているみたいですから」
「あっ、ああ……そう……だね」
「はい。お時間いただいて、ありがとうございました」
「いや……俺も、……いやごめん。……なんも言えないや、ごめん」
「はい。さようなら、ゆっきーさん。私のマスターをよろしくお願いします」
「うん、分かった。……さよならヒメミちゃん」
ゆっきーさんは、カナに操縦を任せ、オブロの島から離れていく船の中から、動画を撮影していた。
それは桟橋に立つ、小さくなっていくヒメミの姿だった……。
■■■【目覚めてみたらXANAマスターになっていた件】 第一巻完 ■■■■■
(著作:Jiraiya/ 編集:アヒッル)
■ 後書き ■
最後まで読んでいただいた読者の方、片手でも余るくらいの方しかいないかもしれませんが、こんな拙い私の作品を読んでくださった方に、心より感謝申し上げます。
また、この作品を最後まで書き続けられたのは、編集をしてくださった、オーブさん、アヒッルさんのおかけです。
編集の域を超えて、アドバイスもしてくださり、私が単独で書いているよりも、遙かにまともな作品になったことと思います。
いくら感謝してもしきれないぐらいです。
また、途中短期間ながらも、お手伝いいただいたマルさん、公式に載せるお手伝いをしてくださったXANAサポートの担当様。
そして、公式ブログに公開していただく機会をくださったリオさん、本当にありがとうございました。
この作品自体を支えてくださった皆様に、心よりの感謝を捧げたいと思います。
今後について
一人でも可能なこととして、朗読動画か紙芝居動画にしたいと考えています。
またその際には、ご視聴ご支援いただければ幸いです。
需要があれば「第二巻」または、外伝「アヒル隊の死闘」を書こうと思います。
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