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目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 3 3話 「フレンド通信」
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by JIRAIYA
「あのマスター、違うといえば、確かにそうなのです。十時間ほど前から、今までにないことが起きているのは確かです」 「――今までないこと、それはなんだ?」 「はい、マスターへの通信ができなくなっています」 そうか、それでヒメミはここまで歩いて報告に……。 コントロールパネル自体ないから、通信メニューを開きたくても出て……。 ――プン。 えっ、なんだ、いきなり通話メニューが右上の視界にポップアップしたぞ。 右手をそのメニューに伸ばし、AI秘書パネルを開こうとする…… ――プン。 まただ、パネルが開いた。 これもしかして、考えたことが…実行されてる? 一体どういうことだ……まさか俺の思考をよみとってるのか? いや、そもそも今俺VRゴーグルつけてないよな……いや、もしかして――! そこであることを思い出した。 そうだ、一週間ほど前の事だ。 XANAメタバースがスタートして一年後、秘書たちのAIマザーが第二世代と進化して、AI達が疑似感情を持つようになり、よりリアルな態度をとるようになった。 そして更に三年目が過ぎようとするころ、巨大なゲームファイ企業がXANAに参入することになった。 そして一週間ほど前、最新の専用AVゴーグルの試用版というものが送られてきた。…

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 4 第4話「カオス会議」
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by JIRAIYA
――コンコン。 再びドアをノックする音があった。 このデジタル空間メタバースで、ドアをノックすること自体、なんか違和感がある。 もっともここが、メタバースなのかも分からないが。 「マスター、カエデやで。なんか、通信できひんさかい、直接来たで。んと、マミっちと、忠臣くんもいんで――」 第三秘書のカエデの声だった。 京都弁の女の子に憧れていた俺。 ただ自分自身は京都弁をしゃべれないので、適当に覚えさせたからか、他の方言とかも混ざっている気もするが。まあ自分が楽しければそれでいいのだ。 そうか、今八時過ぎだ。 この時間に状況報告をするようにAI秘書達に命じてある。 通勤電車の中で、いつもスマホで報告を聞くようにしている。 AI秘書達は二十四時間稼働しているから、昨日の報告というより現時点での報告だ。 「いいぞ、入ってくれ」 ドアが開けられると、「あっ、みんなおったんやー。やっほー」ってカエデが元気よく飛び込んでくる。 「あなたたちも、通信できないのね」 ヒメミは、自分の場所を空けて、三人を向かい入れた。 「いらっしゃいカエデ、元気してた?」 と言って、ミサキはベッドに座っている俺の左横にくっついて座った。…

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 5 5話「肉体って不便じゃね?」
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by JIRAIYA
「マスター、何ニヤニヤされているんですか? 気持ち悪いです――」 ヒメミの冷たい視線を感じて、俺は物思いから覚めた。 「あっすまん、ちょっと妄想を……」 「で、殿、拙者たちは何をすればよいでござるか……命じていただければなんでも致しますぞ、どんな相手もこの剣で一刀両断に!」 「いや、その、知恵を貸してほしいのだ。俺は今、ちょっと理解しがたい状況に置かれていて、その原因というか……現況が分からないのだ」 俺は、どれだけAIたちが理解してくれるか分からなかったが、自身の置かれている状況を必死になって説明した。 皆黙って聞いてはいるが、メタバースしか知らないAIたちに、ここが仮想空間世界であり、現実世界が別にあって、肉体というものや生物というものがある事を理解させるのは無理ではないかと思えた……。 だいたい、AIに自己というものが存在するのか? AIは自分で考える、思考できる物と言っても所詮は人間が与えた知識や教養を上回るほど、まだ進化してはいないだろうし、この俺の下手な説明を彼女たちがどこまで理解できるか極めて怪しい。 「ようするに、私たちがいる世界と、マスターのいる世界をマスターは自由に行き来出来ていたのに、それが出来なくなったという事ですよね」 やはり最初に理解を示したのはヒメミだ。 「マスターは元の世界に戻れなくなっている原因を知りたいという認識でよろしいでしょうか? また、マスターはこの世界は自分の脳内だけに存在し、現実世界ではないという疑問をお持ちの様ですが」 「――そのとおりだ! 凄いなヒメミ、俺の言いたいことの確信を捉えているぞ、さすが第一秘書だ」 「お褒めいただきましてありがとうございます。ただ私自身はココに存在していて、これが現実であるという認識以外はできません。なので、マスターがマスターの世界に自由に戻れない原因を探るというお手伝いしかできないと思います」 「わかった。たしかにそうだ、それでいい。一緒にその原因を探って欲しい。そうすれば、俺が今ここにこうしている原因が掴めると思う」 「かしこまりました。みなさん、いいですね。マスターのおっしゃったこと、分かりましたか?」 「はいっ、えっとー、質問です」 「なんですかミサキ」…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 6 6話「スケボーとパッション」
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by (JIRAIYA:著)
「えっと、それじゃこれからすることだが、まずは情報収集したいと思う」 「すみませんマスター、通信の異常については、ずっとマザーⅡ(第二世代AIマザー)に問い合わせているのですが、全く返事が来ません。繋がってはいるようなのですが……」 「ミサキもそうです、マスター」 「うちもそうどす」 「拙者もでござる」 「――マミ、あなたはどうなの?」 「えっ……」 マミはヒメミの声に、俺の右腕でぷるっと震えた。 「おっ、おんなじ……かな」 「なに? 聞こえへんで。あんたいつもマスターに甘えてばっかりで、全然役にたってへんで。最新の第三世代AIなんやろ、少しは……」 マミの瞳に涙が浮かんだように見えた、さすが第三世代AI……泣くこともできるのか……。 ​​ 「まっ、まあ、マミはまだ来て三ヶ月だし、設定も小学生みたいだから(――知らんけど)。許してやってくれ」 「なんかさ、マスターってマミには甘いですよね。さっきは、ミサキにかわ――」 「よしそれじゃー」 なんか更に揉めそうなので、俺はミサキの声を遮った。 「実は、先ほど確認したら、ギルドユニオンのメンバーが何人かインしているようなんだ。通信もマップ表示もでないから、直接行くしかないんだが、とりあえず、ザナリアン初期メンバーなら何か分かるかも知れない……」 「なるほど、そうですね。では、探しに行きましょうマスター」…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 7 7話「牡丹餅とオンブ」
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by (JIRAIYA:著)
お気に入りのスケボーに乗って、パッションソルトのオムライス店に着いた。 店員AIのミルちゃんに、スペシャルオムライスを注文する。 スペシャルは、通常のオム(ライス)よりも五割増しの価格だが、スタミナアップだけでなく、スケボーのスピードアップにもなるのでお得だ。 「ミルちゃん、今日は店長、いや、オーナーのソルトさんと会った?」 「いえ、会っていませんよ」 顔馴染みなので、ミルちゃんは愛想よく答える。 「というかですね、オーナーとなぜか通信できなくて、困っているんですよ」 「あっ、やっぱり、そうなんだ!」 「よいたろうさんもですか?」 「そうなんだよ、秘書たちと通信できなくてさ、そしたら彼女たち、直接俺のところまで来たよ」 「そうなんですね、私、店番があるからオーナー探しに行けなくて困っているんですよ」 「そうだよねー」 「と言ってもですね、今日のお客様、よいたろうさんだけなんですけれど」 確かに、ワンブロックだけだがAI以外のアバターには、まだ出くわしていない。 「イッタイゼンタイ、どうなっちゃってるんでしょうか……」 「うん、バグでも起きているのかもしれないね」 もっと深刻なことになっていそうだが、ここでこの娘を不安にさせることもないだろう……って、AIが不安になるのかな? 「もし、うちのオーナーをみつけたら、心配だから、会いに来てほしいと伝えてくれませんか?」…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 8 8話「恐怖のペンペン来襲!」
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by (JIRAIYA:著)
マミがいつになく大声で叫んだ。 俺は足を路面につけて、ブレーキをかける。 急には止まれない。 「早く止まって――!」 「待て、慌てるな、今止まるから、どうしたんだ?」 「なにかが来る……」 マミが言い終わらないうちに、俺にもなにかが来るのが見えた。 なにか、集団が十一時の方向から大量にやって来る。 「何だあれ?」 「マスター、あれ危険! 怖い物来る」 「逃げた方がいいのか……」 「ダメ、もう間に合わない――!」 言い終わらないうちに、マミは俺の背中から飛び降り、俺の前方に出た。 「マミ?」 「マスター下がって、マミが守る」 「えっ……」 さっきまで、か弱そうだったマミなのに? 俺の三分の二もない体格で、俺の前で勇ましく構える。…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 9 9話「おじさんと援軍」
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by (JIRAIYA:著)
声のする方を見た。 俺の手、といってもアバターの手だが、そこに縫い付けられているおじさんと目が合った。 リアムアバターは、XANAメタバース内では知る人ぞ知る大人気アバターだ。 本体は可愛い女の子のアバターだが、引きずるシリーズというのがあり、右手に何かを掴んでいる。 俺が今、身に着けているアバターは、こんな設定がされている――。 『元ОLのマキ。飲み会で酒が入ると、新人のОLたちに、すぐに説教を始める。セクハラするキモ親父たちを狩り、その見せしめとして、おじさんをいつも一体引きずり回している』 いつもは、移動の時に「超ー邪魔くさいなあ」と思っていたのだが、そのおじさんが救ってくれた。 いや、たまたまなのだが。 「おじさん、喋れたのか――」 おじさんは、身動きせず知らんぷりをする。 「おいおい、今確実に目が合ったよね――」 「――デュエル!」 「――デュエル!」 突然、ペンギンたちの後方で、その声は聞こえた。 そこからおじさんの存在は忘れてしまった。 ウルトラマンのデュエルカードとアトムのデュエルカードがペンギンたちの後方に出現する。 助けに来てくれたのだ! ペンギンたちの列が削られていくと、その正体が分かった。…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 10 10話「イブと地下迷宮」
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by (JIRAIYA:著)
「おおー、よいたろうさん、無事でしたか―」 ギルドの会議室に入ると、三人の仲間が迎えてくれた。 そこに居たのは、椅子に腰掛けたギルマスのジショさんと、XANAメタバースでフリースクールを運営しているチックタックさん。 そして、AIの胸元に頭だけ抱えられている、ぺんちょさんだった。 俺は頭だけのぺんちょさんに最初ぎくりとしたが、突っ込みは忘れない。 「ぺんちょさん、なんか幸せそうですね」 巨乳AI彼女に抱えられていたのだ。 「んなわけあるかい――ぺん」 そこで全員大笑いする。 「――ネタですよねそれ?」 「ヤメテ―!」 「あはは、ぺんちょさんは、ちょうどログアウト中にロックされたみたいで、頭だけ残ったんだ」 ギルマスのジショさんが続ける。 「でもそのおかげで、ぺんちょさんだけが、リアルに存在しながら、XANAの僕らとも繋がっていられるんだ」 「おおーそうなんですね、じゃあ、やはり俺たちXANAの中に閉じ込められているってことなんですね!」 「うん、思考というか、意識だけXANAにロックされてリアルに戻れない状態だと思う」 「よかったー、俺、死んで転生したのかと思いましたよ」 「よいたろうさん、ラノベの読みすぎ――」…

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Reborn As A XANA Master

第1章
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Episode 11 11話「帰る場所」
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by (JIRAIYA:著)
ヤキスギさんが用意してくれたのは、背中合わせに背負えるおんぶ紐だった。 紐というより、リュックのようなイメージだ。 両手が自由に使えるのはありがたい。 ヤキスギさんとリブさんは、「そこまで送りますよ」と玄関まで見送りに来てくれた。 ギルドハウスを出るとき、あっ、これまずい――! と気づいたのだが、もう遅かった。 即座に三人のAI娘たちの鋭い視線が飛んできた。 いや視線だけではなかった。 ミサキとカエデが、ほぼ同時にすっ飛んできて、あっという間に取り囲まれた。 俺にとっては、飛んでこないヒメミの方が怖いけど……。 「ちょっと、マミちゃんどういうこと!」 「なんでマミだけ、そないなことしてもろうてんねん」 「いや、ちょっと待て……」 そこへ、ヒメミが急に二人を押しのけてきた。 そして俺に背負われているマミの右足に触れる。 そうか、察してくれたのか……。 「――どうしたのこれ!」 その言葉にミサキとカエデも、マミの右足の膝から下が欠損していることに気づく。 「やだ――なに!? その足――」…

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Reborn As A XANA Master

第2章
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Episode 12 12話「有志とパッション」
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by (JIRAIYA:著)
「ぺんちょたん、なんで頭ついてんの?」 「はっ? リアムンちゃん、頭なかったら生きてないぺん――!」 「だってさぁ、XANAに頭おいてきたんだよねー」 「だから――」 そんないつもの会話から始まったのは、ギルドユニオンのオンライン・ゼーム会議だ。 右サイドに参加メンバーが表示されている。 サブギルマスのパッションソルトさん。 運営とのパイプを持つぺんちょさん。 デザイン部のリアムンさん。 制作部のリヨウさん。 警備部のオーブンさん。 宴会部のまこちゃんさん、ユウホさん。 初心者案内部のルドさん、ハマヤンさん。 クリプト部のビットンさん、ベンガさん。 など、その他二十人ほどのギルメンたち。 そしてクイーンギルトのウミユキさんが参加していた。 リアルタイムで通信ができないので、俺はあとからこの会議の様子を録音で聞いた。 だから誰の発言か分からないところもある。…

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Reborn As A XANA Master

第2章
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Episode 13 13話「ペットとボート」
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by (JIRAIYA:著)
新しく設立された地下迷宮オブロは、ビーチからすぐ見える無人島に設置されている。 この島自体が新しく作られたワールドだ。 必要な装備を購入するため海岸通りのショップに立ち寄った。 ヤキスギさんにいただいたJXBカードでパッションソルトさんのオムライス、リアムンさんのアバター、ヤキスギさんのおやきを購入した。 AI秘書たちの武器防具は、既にアイテムを用意してあるが、念のため確認しておくことにした。 アイテムバッグを意識するだけでパネルが表示される。 とてもリアルで持ち運べる量ではないが、それがメタバースのいいところだ。 アイテムの中に点滅しているものが二つある。 あっ――! そうだ、ペットのリビールだ。 リビールとは、購入した時点では中身が開示されないNFTが公開されることだ。 クリックを意識すると、ポン、ポンと飛び出してきた。 一匹目はかなりでかい犬だ。 「あっ、マスター、そのセントバーナード、騎乗スキルあります!」 ヒメミがいち早くステータスを読み取ったようだ。 少し遅れて俺も『ステータス』を意識してポップアップされたデータを確認した。 大型犬、セントバーナードタイプ。 救助スキルを持つ、戦闘時は使用できない。 スキル使用後、全ステータスを全回復する。…

目覚めてみたら、XANAマスターになっていた件

Reborn As A XANA Master

第2章
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Episode 14 14話「裏切者」
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by (JIRAIYA:著)
桟橋にボートが近づいてくる。 カエデは相変わらず、船首に仁王立ちして腕を振り回している。 操縦席に人影は見えるが、まだ誰かは分からない。 ゆっきーさんが、XANAメタバース内にログインしていることは確かだが、マップを開いても表示されないし、通信もできないので、ゆっきーさんである確証が持てない。 それでも、特定の区域だけのようだが、ログイン状態だけでも確認できるのはせめてもの救いだ。 「マスター、ゆっきーはんどすえ。ユニオンのゆっきーはんどしたで――」 カエデの声が届いた。 やはりゆっきーさんか、でも他の三人は見当たらない? 船が桟橋に着いたので、急いで操縦席に向かった。 「よいたろうさん!」 「ゆっきーさん、よくぞごぶ……」 ゆっきーさんの両足はなかった。 「あははー、大丈夫ですよ、見た目はこんなんですが、痛くもかゆくもないから」 そう言われても、やはりなんか痛々しい。 「そっ、そうみたいですよね……やはりバスターペンギンたちに……」 「そうです、やられました。それで戦力にならないので、俺とこの娘、カナはボートに残ってました」 「なるほど、では、ダブルティムさん、たもつさん、ボタモチさんは、オブロに入ったんですね」 「そうです。あっ、詳しい話は後でします。あと五分ほどで奴らが来ます。早く全員ボートに乗せてください」…
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